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【下町ロケット2ガウディ計画:池井戸潤】pmeaがデタラメ言っていたので弁明します

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下町ロケットみてますか?

実は私はみていなかったのですが、仕事が医薬品医療機器等の業界で「下町ロケット見た?pmeaひどかったよね〜。ふつうの人は誤解しちゃうんじゃないの」と上司がいっているのを聞いてみてみました。

 

《目次》

 

下町ロケット2はkindle版で

kindle版1458円、単行本1620円です。新刊なのにkindle版は10%offです。文庫が出てませんので、重い単行本を持ち歩くよりやっぱkindleでしょう。

inyoshoten.hatenablog.com

 

pmeaとPMDA(ここからネタバレです)

11月29日に放送された第7話に「pmea」という組織が出てきました。

画面にも「Pharmaceutical and Medical Equipment Agency」の略で、日本語で「独立行政法人医薬品医療器具総合機構」と書かれたシーンが映し出されました。

これは実在する組織「PMDA」をもじった名前です。PMDAは「Pharmaceutical and Medical Devices Agency」の略で、日本語表記は「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」。医薬品医療機器等の審査と安全対策が仕事です。

「Devices(医療機器)」を「Equipment(医療器具)」にちょい変更した人、めちゃセンスあります!医療機器について、現行の法規制では『この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。』と定義されています。つまり、機器=器具等といっているので、ほぼ同じ意味です。

ドラマではpmeaとの「事前面談」のシーンが出てきますが、この場面のレイアウトとかも実際の事前面談と結構似ています。テレビ局の取材力ってすごいですね。

ところでドラマではpmeaになっていましたが、本では「PMDA」と実在の組織と同じ名前で書かれています。劇中でのpmeaのいかにも悪役的な言動と態度の社会的インパクトを配慮して、わざわざテレビ局が変えたのでしょう。本よりもはるかに多くの人に、動画でイメージとともに伝わりますからね。この名称変更はナイスプレーでした。

 

PMDAに変わって弁明

本からの引用です。ほぼ同じ台詞がドラマでも使われていました。

「つかぬことをお伺いするんですけどね、 この開発に携わるのは、本当に皆さんだけなんですか」

「とおっしゃいますと」

発言の意図が読めずにきいた一村に「大丈夫かなと思いましてねえ」、と滝川は疑問を口にする。

「ご存じだと思いますが、こうした医療機器にはリスクがつきものでしてね。 万が一、何かあった場合、 あなた方にその責任が取れるかどうか心配しているわけですよ、私は。北陸医科大学はともかく、サクラダさんはベンチャーでしょ。それに佃製作所は、大田区の中小企業だ。こういっちゃなんですが、吹けば飛ぶようなところばかりじゃないですか。これで医療機器開発っていうのは、いくなんでも荷が重いんじゃないの」

(中略)

滝川は、提出した資料を片手で持ち上げた。「こんなペーパー、 作ろうと思えば誰だって作れますよ。審査の本質っていうのはね、 何を作るかという以前に、誰が作るかなんだ」

PMDAの滝川、ドラマではpmeaの滝川のセリフ審査の本質っていうのはね、 何を作るかという以前に、誰が作るかなんだをみて、どう思いました?

まさか「現実の医療機器とか医薬品の審査も、そんなものなんかなあ」って思ってないですよね?

PMDAに変わって弁明します。そんなこと絶対にないですから!実体験なので間違いないですが、PMDAがこんなセリフを吐くことは100%あり得ません。彼らは医学や、審査や安全対策に関するレギュラトリーサイエンスという科学に基づいて相談者に助言をします。

池井戸さんも「大企業は悪で、行政と裏で手を組んで中小企業を邪魔してくる。中小企業はそれに抗って難関を突破していく」という勧善懲悪を書いたのでしょうが、行政側を書くときはどうしても当事者が存在してしまうので考えものですよね。

しかもテレビ放映されている人気ドラマでこんなシーンが流されたらPMDAもたまったもんじゃないでしょう。抗議したのかな?抗議しないまでも、弁明文をホームページに載せないのかな...と考えましたが、きっと弁明した方が余計怪しくなるから書かないのでしょう。

あと下町ロケットで佃製作所も含めた相談者が利用したのは「事前面談」ということでした。正確にはおそらく「開発前相談」という相談区分で臨床(ヒトへの使用)移行前に開発コンセプトを相談したのだと思います。このあとに、「治験相談」という相談区分で、治験(ヒトに使用する試験)デザインについて細かく合意した後に、相談者は治験開始の手続きをはじめることになります。

もっといえば、「事前面談」の「事前」というのは、1つの相談区分のメインの相談「対面助言」の前に行われるという意味です。「事前面談」では「対面助言」の論点整理が行われます。

通常のケースでは「事前面談」だけで、しかも「開発前相談」だけで治験が始まることはないです。本やドラマをみて「1回相談してすんなり通れば、割とすぐにヒトの試験ってはじめられるんだ」と思うかもしれませんが、誤解です。

慎重な治験開始前の検討も含め、治験後の承認審査まで一貫してPMDAは科学に基づくスタンスをとります。決して会社の規模をみた批判的な発言はしません

なぜなら、科学がPMDAの拠りどころ、強みでもあるからです。過去に経験した薬害を再び繰り返さないよう、彼らも必死で科学を追求します。その結果、導き出した主張を相談者/申請者に、企業の大小に関わらず一貫して投げかけてきます。だからこそ企業は怪しい裏工作に精をださずに、製品に集中して開発プランを練り、不足した根拠を補っていくのです。

 

まとめ

誤解のないように。企業とPMDA双方のやり取りがあってこそ、一定の科学的根拠に基づいて安全性、有効性が確認された医薬品医療機器等をわたしたちは使うことができるのです。

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