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【黒沢:福本伸行】正常と異常っ・・・それらは分かれてねぇっ!異例の最高傑作

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報道でみましたか?名古屋で起こった外国人の車内暴行殺人事件。怖いですよね。被害者はコンビニに駆け込んで、病院に運ばれた後に死亡しました。

この話、ただ「外国人は怖いよねえ」としか思いませんか?

「外国人は」ですか?「日本人は」全く関係ないですか?日本人が関係するにしても「ヤクザとか不良って怖いなあ」ですか?

自分の身に起こったら・・・と少しも考えられないですか?それならなおさら、この記事を読み進めてください。

 

 

《目次》

 

福本作品中での『黒沢』の位置づけ

「黒沢」はギャンブルマンガ界のレジェンド福本伸行先生が、冴えない中年オヤジ黒沢の世間との葛藤(中盤以降はほぼ不良との格闘)を描いた作品。他の福本作品との違いはなんといってもギャンブルをしない点でしょう。異例です。

「黒沢」は未読でも「カイジ」なら読んだことありますか?

カイジって一旦ギャンブルが終わると、いつも堕落した貧乏青年に戻って、しょーもない日々を過ごしますよね。マンガ「黒沢」ではそのしょーもない日々が長めに続きます。そして「カイジ」でいう人生の勝負どころギャンブルが、「黒沢」では不良との格闘にあたります。

人によるのでしょうが、福本作品のなかでも「黒沢」は共感できる洞察が多いです。 そのなかで、「これは本っ当にそうだ!」というのが、頭のきれる不良 仲根の心の語りです。

地続きだっ・・・!

死ぬこと・・・生きること・・・

殺すこと・・・殺しちまうこと・・・

正常と異常っ・・・

それは・・・それらは・・・分かれてねぇっ・・・!

つながっているっ・・・!「今」の先にある・・・!

なのに・・・なんか異様な事が起こると・・・

別次元の話・・・自分らとは無関係な・・・

異次元の話みたいにして・・・切る・・・!

そんな連中は・・・怖くねぇ・・・!

殺す気も・・・殺される気もねぇんだっ・・・!

病気ならまだしも、自分が殺されるとか人を殺すとか、あり得ないと思いますか?

私は思いません。運命の歯車や自分の考え方の少しのずれで、宗教にはまったり、事件に巻き込まれたり。場合によっては自分が事件を起こす。そういう非日常は、日常と地続きの場所にあるのです。仲根のいうように異様な出来事を全て「人ごと」として切る人は、生きるか死ぬかだけでなく実際に修羅場をみてきた人にとっては全然怖くない。それは全てを自分ごととして真剣にとらえて思考をめぐらすという人間的深みがないからでしょう。

 

スタートとラスト

さすが福本先生、毎作品そうですが「黒沢」でも1巻のスタートから心に刺さる人間考察が全開です。

「黒沢」はいきなりサッカー観戦のシーンで「胸の奥がどんどん冷えていく」ところからはじまります。心が冷めていくのは、スポーツ観戦は所詮他人の活躍をみているだけで、自分の活躍ではないからです。

同じ1巻の「人望が欲しいっ・・・!」がきっかけで仕掛けたアジフライの顛末は涙なしには読めません。

そして11巻ラスト。自分を見限ってたってことに気づいたホームレスの後悔、世間という理不尽な暴力に押しつぶされながらも夢だけは持ち続けた黒沢の人生、このシーンは比喩ではなくぼろぼろ泣きました。マンガで泣くことってそうないんですが。

本当はラストを引用したいんですが、もったいないので止めました。ご自身で読むときのためにとっておいてください。

 

福本伸行の他の作品

『黒沢』は11巻で完結しましたが、『新 黒沢』が連載中です。ベッドから復活した黒沢が暴れます。

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