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【ハード・シングス:ベン・ホロウィッツ】自己啓発より泥臭いリアル

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起業関連のビジネス書って、10年ビジョンとか世の中を変えるとか、歯の浮くような自己啓発系も結構多いですよね。

自己啓発系は腹一杯という方は『ハード・シングス』を読まれては?

《目次》

 

文字通りハードなストーリー

シリコンバレーのベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者ベン・ホロウィッツの著書。

文字通りハードなシングスが満載です。綺麗な起業ストーリーではなく、泥臭いリアリティが赤裸々に記されています。 

苦闘とは、料理の味が分からなくなること。苦闘とは、自分自身がCEOであるべきだと思えないこと。苦闘とは、自分の能力を超えた状況だとわかっていながら、代わりが誰もいないこと。苦闘とは、全員があなたをろくでなしだと思っているのに、誰もあなたをクビにしないこと。 

この後も、「苦闘とは」が11回も続きます。一体どれほどの苦闘かは本著を読めば少しは感じられるかもしれません。実際に体験せず共感するだけでは、身に迫ったものじゃないでしょうが。

こうした苦闘を乗り越えるための答えはないが、助けになったこととしてホロウィッツは以下をあげています。ピーター・ティールもそうだったけど、修羅場をリアルに体感した人たちは「答えはない」と言い切る傾向があります。苦悩というのは、最後は自分で解決するしかないのでしょう。

・ひとりで背負い込んではいけない
・長く闘っていれば、運をつかめるかもしれない
・被害者意識を持つな
・良い手がないときに最善の手を打つ

はっとする助言はありますか?

私には「長く闘っていれば、運をつかめるかもしれない」が染み入ります。誰の本で読んだのか忘れましたが、天の利、地の利、人の利が揃ったときが何かを動かすタイミングだという考え方を、私はしばらく前から信奉しています。

  • 天の利:法規制など、自身が抗いがたい外的障害がなくなるとき
  • 地の利:自社や自身がしかるべきポジションを陣取り、地盤が整うとき
  • 人の利:プロジェクトを動かすための必要なプレイヤーが揃うとき

このように解釈しています。3つが揃わないうちは「まだ動く時じゃない」ので、粛々と長く闘って機会を待った方がいいのです。成否を分ける要素としてタイミングは最重要です。

それでもホロウィッツが言うには「かもしれない」ので、「いくら待ってもダメなときもあるでしょそりゃ、次いこ次!」ぐらいに思っとけば苦悩も少しは和らぐんじゃないでしょうか。

 

危機に面したときは君主論的なリーダーが必要

本著にはホロウィッツたちが同僚(たいがい部下)に厳しく態度で接するシーンがいくつか登場します。

  • プレスリリースをためらう共同経営者に自社の危機を説明して「くそったれが」
  • 顧客の意思決定者(副社長)にアプローチしない営業に「まず、そのバラ色のメガネを外せ。次に綿棒で耳垢を掃除しろ。最後に、ピンクのパンツを脱いで、今すぐその副社長殿と話してこい」
  • 新入社員を見回して「きみたちがどれだけ訓練されているかなんて、どうでもいいんだ。四半期当たり50万ドル集めてこれなかったら、頭に弾丸をお見舞いする」
  • 過去6ヶ月間、部下の面談をしていないマネジャーを管轄する上長に対し「24時間以内に彼の部下一人ひとりと面談しないなら、私はかれをクビにして、きみをクビにする」

なぜこのような態度をとるのか?ホロウィッツはこう説明しています。

世界は、平時に見たときと、日々命を賭けて戦わなくてはならないときとでは、まったく違ってみえる。平和な時代には、適合性、長期にわたる文化的影響、人の気持ちなどを気遣う時間がある。しかし、戦うときには、敵を倒し、部隊を安全に連れて帰ることがすべてだ。

注意すべきは「部隊を安全に連れて帰ることがすべて」であり、ホロウィッツらの態度は決して「冷淡」そのものではないということ。気遣うヒマがあったら戦闘に勝つ方法を考え抜いて、端的に伝えろ!というメッセージです。(そういう意味じゃ赤系のメガネとパンツのくだりは余分・・・)

マキャベリズムの本質は冷酷さにではなく、徹底した合理主義にあるのです。

 

まとめ

世に出ている経営書は成功体験ばかりで、戦時のCEOの経営スタイルを分析した経営書を読んだことがないという背景から、ホロウィッツは本著を書いています。

他人の成功体験や自己啓発トーンに食傷気味の方、たまには違うものを味わってみては。