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【世界最高のバイオテク企業:ゴードン・バインダー】バイオ関連企業がベンチマークすべきアムジェン

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今回は割と専門な話です。とはいっても一般書なので本自体は難しくないです。

『世界最高のバイオテク企業』バイオ関連企業のベンチャーにいる方は必読ですよ。本著は、最も大成したバイオ企業アムジェンに起業時から関わり、上場したときのCEOが書いた本だからです。

ジェンザイムとの特許論争も生々しく書いてあって、さながらベン・ホロウィッツ『ハード・シングス』のバイオ版です。

《目次》

 

なぜアムジェンは成功したのか

米国のメーカーが生物製剤の最初の20製品を製造し、さらに市場を支配し続けているのは偶然ではない。同様の状況は、パソコン、ソフトウェア、半導体などの業界にもある。1970年代末から1980年代初めにおいて政府の研究助成金の助けにより、大学は優秀な研究者を排出し、技術面でも優位に立った。最も重要なのは、米国はその他の世界には無い起業家精神を持っていたことである。バイオテクノロジーを生んだのはNIHや大手製薬企業ではなく、アムジェン、ジェネンテック、バイオジェンといった小さなベンチャー企業である。こうした状況は他の国では起こっていない。

アムジェンは2012年全世界製薬業界売上ランキングで13位になるほど、旧来の製薬を含めてもビッグファーマといえるバイオテク企業です。トップをひた走り、バイオでもここまで成功できることを世界に見せつけました。これだけでもアムジェンがバイオ業界に与えた価値は計り知れません。

それにしても「生物製剤の最初の20製品」が米国発だというのは、他の業界と比べてみても極端じゃないでしょうか?一般論でも米国はイノベーティブなのですが、ことバイオに関しては当時米国で強力な追い風が吹いていたのが1つの理由です。研究助成金の増加だけでなく、得られた特許を自社のものにできるバイ・ドール法がそれです。

もう1つの理由が「起業家精神」。バイオテクノロジーは成功か不成功かのリスクを科学に委ねることになり、かつ立ち上げたばかりでは売上規模も望めないのが特徴です。リスクコントロールもできず規模もない、金融畑の人たちからしたらどうしようもない業界なのです。物事を合理的に考え、しかも既に稼ぎの規模が大きい大手製薬は手が出せない。だから、ベンチャー企業が牽引することになる。つまり「起業家精神」がないと進まない業界なのです。逆に言えば、これからベンチャーを立ち上げる人、小さなベンチャー企業にとってはチャンスが転がっています。それを実証したのがアムジェンです。

 

これこそ企業価値感に基づく行動

アムジェンの企業価値感は8つ。その中でもトップに添えられているのが「科学に基づけ」です。以下は、セールスが複数品目を担当する従来の製薬企業と同じスタイルをとるか、担当を1製品に特化するかを決める場面からの引用です。

わが社は科学に依存する会社だ。実験をしてみたらどうだ。無作為に2つの地区を選び、しばらく例えば6ヶ月間、それぞれの販売員は1つの製品だけを売る。それでどのやり方がベストな結果になるのかをみる。うまくいかなければ元のやり方に戻せばいい。当て推量ではなく正しい答えをしることができる。

バイアス(データの偏り)がでないように「無作為」に「実薬群」を選び、同じ環境にある「対照群」をおく。「期間」を6ヶ月と決め、「実薬群」では1人1つの製品を売り、「対照群」では1人で複数の製品を売る。得られた両群の営業効率を比較する。

治験(ヒトに薬剤を投与してデータを集める試験)デザインの話みたいです。営業の話なのに、「科学に基づけ」を地でいっています。

この試験で「実薬群」が勝ったため、全米にわたるアムジェンのセールス部隊は1人1製品体制に変更されました。結果、セールスのモチベーションは上げり、顧客にも支持され、アムジェンは売上を伸ばしていくのです。

テクノロジー企業で「科学的」「革新的」という価値観をうたっているところは多いですよね。しかし、アムジェンの徹底ぶりはそれが1番目に来ていることです。「科学」がチームワークとか倫理とか誠実とか、もっともで聞こえがよい項目よりも優先度が高いのです。

わたしたちは何より「科学」を優先する。営業体制といった科学と関係なさそうな議論にも科学を持ち込ませるほどに、価値観が浸透していることをうかがわせるエピソードです。

 

まとめ

「治験のマニュアルはありますか?」と聞いた転職組に対し「そんなものないよ。計画は自分でつくるんだよ」と社員が答えるシーンがあります。他にも、不足する人材は社内から探すというエピソードも。

自分で考えて新しいものをつくる。誰かがやるのではなく、自分で何でもやる。これが起業家精神という漠然とした言葉の本質でしょう。アムジェンはそれを起業後何年何十年とたっても保ち続けたからここまで成功したのです。全てのバイオ関連企業はアムジェンをマネすべきですね。