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【世界の経営学者はいま何を考えているのか:入山章栄】まだ居酒屋トークで適当なこと言ってるの?

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「居酒屋トーク」で適当なこと言ってるヤツ、嫌いですねえ。居酒屋に限らず場所はどうであれ、実証されたことを正確に語りたいものです。

とずっと思っていたのですが、同じことを本に書いた方がいました。しかもその道の専門、ニューヨーク州立大学でアシスタント・プロフェッサーをしていたゴリゴリの経営学者 入山章栄です。『世界の経営学者はいま何を考えているのか』は2012年出版後すぐに読んだのですが、漠然とした違和感を専門的論述でスパッと切ってくれて、爽快な気分で本を閉じた記憶があります。

入山さんの著書は2冊なので、連載記事にします。それでは第1弾をどうぞ。

《目次》

 

経営学についての勘違い

アメリカの経営学の最前線にいるほぼすべての経営学者は、ドラッカーの本をほとんど読んでいません。

ドラッカーの言葉は名言ではあっても科学ではない。一方、経営学は社会科学の1つで、統計手法をつかって普遍的な法則を追求していく学問です。確かにドラッカーって、経営学者というより哲学者、予言者といった方がしっくりくるかも知れません。そうするとドラッカーの本は経営書ではなく「優れた自己啓発書」になります。入山さんはドラッカーを否定しているわけではなく、むしろここまで多くの人(特に日本人)の心を動かしていることは注目すべきで、最新の経営学と比較して実証してみる価値はありそうだと言っています。

ところで入山さんの文章って、この引用でも書かれている通り「ほとんど」といった表現をよく使います。歯切れが悪いって思いますか?そうじゃないんです。わたしは「さすがだ!」という印象を持ちます。なぜなら自己の発言にある程度責任を持ち、正確な表現を使っているからです。この例だと、少なくともトップレベルの経営学者はドラッカーを研究対象とはしていないが、趣味で読んでいるかもしれないので「ほとんど」を使っているのです。

他にも、「マイケル・ポーターとかヘンリー・ミンツバーグのことを研究しているワケでもない(昔の経営学者なので)」「ハーバード・ビジネス・レビューは経営学の学術誌ではない(ビジネスパーソン向けに最新ではなく周回遅れの情報が実践編として書かれるので)」という日本人にありがちな勘違いを正すところからはじまっています。

 

適当な居酒屋トークはやめるべき

「日本人は集団主義だからね、云々」「これからは攻めの経営だよ、云々」と入山さんも例をあげていますが、居酒屋トークでイラッっときたことありませんか?

適当なことをそれらしく言うヤツ。だいたい上の例のように、「自分が主張したいことの前提」として真実めいたことが語られます。「ああそうですね」と反応しがちですが、そこは「それ実証されていることなの?」と疑いましょう。そして、いい気分で語っている話の腰を折るのも難なので話半分に聞くというのが適切な対処法です。

締めは「日本人は集団主義だから」と適当な前提でクダを巻いてくるオッサン(あなたはもう適当なこと言っちゃダメですよ?)へ向けた、入山さんの文章で。正確を求めて言い切らない、入山節の代表例でもあります。

世界中の多くの経営学者が「国民性」の計測を試み、これまでにいくつも国民性の指標が発表されています。

その中でも間違いなく最も有名なのは、マーストリヒト大学名誉教授のヘールト・ホフステッドによる、いわゆる「ホフステッド指数」です。国際経営学者でこの指標を知らないものはいないであろう、というほどに有名な指標なのです。

ホフステッドは、1970年代後半に巨大多国籍企業であるIBMの世界40カ国の従業員11万人に質問表を送り、そのデータを使って各国の国民性を分析しました。

(中略)

アジアの国々(中国55位、韓国58位、インドネシア64位)と比べれば、むしろ日本人(店長注:32位)のほうが個人主義的な傾向が強いのです。

もちろん、これはあくまで1つの分析結果にすぎませんので、この指標をもって、日本人は集団的ではない、と断定できるわけではありません。とはいうものの、「日本人は集団的である」という漠然としたイメージを容易に信じ込まないようにすることも重要なのです。

 

入山章栄の他の本

1冊目を書いたときは米国にいた入山さんが帰国後に書いた2冊目が『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』。こちらも発売後すぐ読みました。相変わらずの面白さ、入山節!コンセプトは『世界の経営学者はいま何を考えているのか』と同じで、紹介する事例が新しくなっています。

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