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【見たことないサボテン・多肉植物:小田康平】広島の名店「叢」

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自然がつくる美しさには敵わない 。

素人ながらアートについて考えるとき、この結論に行き着きます。いくら考えを巡らせても、人間が創造するものって多感な幼少時代にみた原風景、そこから連想される空想の世界に結局は終着するものだと。

サボテン・多肉植物は、接ぎ木により自然にあるものを組み合わせて、長い時間をかけてある特定の生育環境に晒すことで完成するアートです。

《目次》

 

「叢」という広島の名店

「叢」は広島にあるサボテン・多肉植物専門店です。本著はその店長が書いた本です。

わたしは愛知に住んでいるのですが、ホームページをみたらどうしても現物を見たい!という衝動にかられて、広島まで行きました。所有欲が爆発してどれもこれも購入しそうになったのですが、3点に抑えました。

qusamura.com

多肉植物がほしいと思った理由は3つです。

  • 観葉植物だと枯らしてしまうので、丈夫な植物がほしい
  • ぱっと見の外観に個性がある
  • 模様が微細で、みていると吸い込まれそうな世界が広がっている

多肉植物は遠目にも形を楽しめますし、近くでじっとみると何とも個性的な模様が微細にちりばめられていて、現実世界の大小がよく分からなくなるような不思議な感覚に陥ります。ふくらみの1つの中にも小さな斑点があり、その中に細胞の世界が繰り広げられているのです。

すぐ観葉植物を枯らしてしまうという現実的な理由もあって多肉植物を購入したのですが、叢の店員さんはとても親切に育て方を説明してくれ、忘れないように各商品に合わせた「育て方の紙」もくれるんですよ。基本、1ヶ月に1回ぐらい水をあげるのですが、水やりの頻度は種類や季節によって変わるのです。この紙のおかげでズボラなわたしでも、1年以上もっています。

 

人によって価値は変わるもの

僕が欲しがる植物は、農家さんにとっては価値の無いものであることもある。僕が自分の価値観で古びたサボテンの風合いをほめてしまおうものなら、「そ、そうかあ。そういう見方もあるね。じゃあ5000円だな」みたいな感じで、便乗で値が上がる。

人によって価値は変わるもの。鑑賞者にとってだけでなく、農家、買付のあいだでくり広がられる価格交渉にも影響を及ぼすというのは何だか面白い。ロジカルに考えてもしょうがないので、こういう場では人間的な経験がモノを言うんでしょう。

叢の多肉植物は、優等生ばかりではなくて木化したり朽ちていきそうな際どい形のものが多いのが特徴だそう。以下は本著に載っていた、朽ちかけの多肉植物をみたベテランのサボテン好きおじいさんの言葉です。

「これを見ていると涙が出てくる。人間もエリートばっかりでない。切られ、痛み、それでもなお成長して新しい枝を出そうともがいている。まるで自分を見てるみたいや」

 

まとめ

冒頭で「サボテン・多肉植物は、接ぎ木により自然にあるものを組み合わせて、長い時間をかけてある特定の生育環境に晒すことで完成するアート」と書きましたが、この表現は正確でないです。

購入してから実感したことなのですが、サボテン・多肉植物は完成することはありません。商品として店頭で売られた後、鑑賞者が購入してからも、環境にあわせて常に変化し続けるアートなのです。

サボテン好きおじいさんではないですが、人間も同じ生き物。個性があり、自覚していようがいまいが変化し続けています。どうせ変化するのであれば、おかれる環境を調整して、意図した変化を自分自身に与えていきたいものです。