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【世界を変えた10冊の本】池上彰が厳選する「宗教史」「経済史」10冊

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「世界を変えた本 」

それは「現在の世界をかたち創った本」と言い換えられる。池上彰が選んだ10冊は全て宗教、経済に関する本であった(アンチテーゼも含めて)。年代的には宗教→経済の順だ。まず「宗教」、その後に「経済」が時代に合わせて世界を変えていったということだ。

われわれの生きる世界は歴史の上に成り立っている。本著に紹介されている10冊のうち「1冊も読んだことない」という人は、1、2冊でも読んでほしい。きっと現代の社会構造の本質を知るきっかけになるから。

《目次》

 

ユダヤ教からキリスト教、イスラム教へ

神は、最後にムハンマドを預言者に選び、彼に最後の神の言葉を伝えたというわけです。これが『コーラン』です。つまり、これが最後のチャンス。この神の言葉をしっかり守れば天国に行けるし、守らなければ地獄に落ちるのです。

これがイスラム教の教えだ。現地語では「イスラーム」という発音だが、日本での慣習にならって「イスラム」と表記します、と池上さんは丁寧に書いている。池上さんは少し脱線してでも読者・聴衆がひっかかりそうな言葉の定義・由来を確認してから話を進めるクセが身に付いている。これはマネしたい。

上の引用でも「予言者」ではなく「預言者」ですよ、と読者に念を押している。「神の言葉を預かる者」という意味だ。

イスラム教では神が絶対。イエスという預言者がいたにも関わらず、人間たちは神の言いつけを守ろうとしない。「今度こそ神の教えを守ろう」というきっかけが預言者ムハンマドの言葉で、ムハンマドが音読した言葉を文字に落としたものが『コーラン』だ。

つまり、イスラム教のルーツはキリスト教ということ。キリスト教のルーツはユダヤ教なので、どの宗教も「神は一つ」と考えていることに変わりはない。しかも、その神は同一のものだ。なぜここまで違いがあるように感じるのか?本著に書いてあった範囲で、各宗教の経典や教えの違いをまとめてみる。

  • ユダヤ教:経典は『律法』。神を意味する「ヤハウェ」はヘブライ語。ユダヤ人という人種との繋がりが濃い。
  • キリスト教:ユダヤ教の『律法』を『旧約聖書』と呼び、それにキリストの言葉『新約聖書』を加えた2つが経典。神を意味する「ゴッド」は英語。預言者キリストを崇拝する。
  • イスラム教:経典は『コーラン』。神を意味する「アッラー」はアラビア語。預言者は神の言葉を伝えるだけの存在で、神を崇拝する。

 

宗教の怖さ

違いはあるものの、「神の教えに従う」という論理はどの宗教でも変わらない。信者以外の人が「宗教って怖いな」と感じるのは、経典に書いてあることを無条件に信奉する点にあるだろう。

ニーチェの「神は死んだ」という言葉は解釈の仕方がいろいろあるが、「分からないことを神に帰着させて思考を止めてんじゃねえよ。ロジックで考えろや!」という意味でとらえると、「経典に書いてあるから」と思考を止めて行動に移す「宗教」って怖いものだなと改めて思う。経典を絶対視する「原理主義」は特に恐ろしい。それがイスラムだろうとキリストだろうと。

 

宗教が経済をつくる

本著では宗教史を紹介した後に、それがいかに経済史に影響していったかを解説している。マックス・ウェーバーによると「強欲の資本主義の精神は、禁欲的なプロテスタントから生まれた」という論理だし、マルクスの理論にもキリスト教的な発想が書かれている。戦争も、貨幣経済も、全て「宗教」がつくってきたという紛れもない事実を実感させられた。

 

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