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【ルワンダ中央銀行総裁日記:服部正也】なぜラノベ読者層に人気?

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『ルワンダ中央銀行総裁日記』がラノベ読者層に人気らしい。

なぜか?

本著は元世界銀行副総裁の服部正也が、1965年から6年間、アフリカ中央の小国ルワンダの中央銀行総裁を務めたときの回顧録である。

こんなガッチガッチに硬い、時代も古い小説がなぜ今さらラノベ読者層にウケるのか?ネットでもいくらか言説があるのだけれど、その理由を簡単にまとめてみる。

実際読んでみたら名著だったので、例によって引用も入れつつオススメする。

《目次》

 

なぜラノベ読者層に人気なのか?

まず舞台が「現実離れ」している点、これが理由の1つだろう。

ネットでは『トロピコ』というゲームが発端とのウワサ。プレイしたことないけれど、解説を読むと「プレジデンテ(大統領)」になって国家をつくる「独裁国家シュミレーション」とある。

www.jp.square-enix.com

 

要は「いかに優秀なファシストたるか」を競うゲームだということ。

何とも挑戦的なゲームだ。「暴力的な描写が含まれるゲームは教育によくない、犯罪を誘発する」とかよく言われるけれど、トロピコは国家レベルの悪人であるファシストを養成するというのだ!「悪さ」の規模が違う。さして問題視されないのは、政治家になるようなエリート層はこのゲームをプレイする機会がないからだろう。

ともかく、『ルワンダ中央銀行総裁日記』がラノベ読者層に人気な理由は彼らにとって「現実離れ」した舞台の物語であることがあげられる。

もう1つの理由は「読みやすさ」だろう。四半世紀以上も前の文章であることを考えると、驚くべき読みやすさだ。

出てくる経済の専門用語は小難しいが、言っていることは分かりやすく、ストーリーも追いやすい。もともとラノベ読者層は、ファンタジックな専門用語やヤケに文学的な言い回しの多いラノベに慣れている。「用語の定義付け」に慣れている。専門用語が満載でも、ストーリーが追えれば頭にすっと入ってくるのだ。

 

ルワンダ経済を立て直した手腕の一例

私は君たちを中央銀行員として扱う。一人前の大人として扱う。君たちは学生ではないのだ。中央銀行員なのだ。独立国ルワンダの中央銀行員なのだ。

「ルワンダ国外の外国人職員がルワンダ人職員を侮辱している」との苦情を耳にしたときの、服部さんの言葉だ。

ヨーローパ諸国をはじめとする外国人職員は、ルワンダ人職員の教育レベルが相当に低いために「彼らは自分たちより下のレベルの人材」と見下していたのだろう。「侮辱」でもあると同時に、現地人を真剣に鍛えようとしない「甘やかし」でもある。

これを断ずるために外国人職員には「対等に扱え」「甘やかすな」、ルワンダ人職員には「怠けるな」「気を張って仕事にあたれ」と服部さんは言ったのである。

できない人材を甘やかすことは、できる人材側にとってもできない人材側にとっても不幸である。当時のルワンダ中央銀行だけの話ではない。

このエピソードは、あらゆる組織が腐っていくのを防ぐための良い教訓になる。本著は組織論、リーダー論としても秀逸な読み物なので、ラノベ読者でなくても手に取ってみてはどうだろう。