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【人間の性はなぜ奇妙に進化したのか:ジャレド・ダイアモンド】育て親を決める「3つの要因」と、排卵を隠蔽する「4つの仮説」

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名著『銃・病原菌・鉄』で有名なジャレド・ダイアモンドが描く、男女の性差を生理学と動物行動学の観点から追求した本『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』。

原著のタイトルは『Why Is Sex Fun?』。随分キャッチーだが、日本語のタイトルの方が広く内容を捉えていてしっくりくる。

面白い本なので『銃・病原菌・鉄』を読んで思うところがあった人、進化や性に興味がある人は手に取ってほしい。(ん?「性」に興味ない人なんていないか)

 《目次》

 

注意:これから本文に書くことはあくまでも「動物行動学」的、もしくはその視点を応用した「人間行動学」的な考察である。進化生物学者のダイアモンドも「この本に書いた通り行動するのが正解だ」などとは全く考えていないだろう。人間の行動学的な特性と、倫理観も含めた「実際にとるべき行動」は違う。

 

育て親は3つの要因で決まる

どちらかの親が世話をしないと子供が生きていけない場合、子育てをめぐって父親と母親のあいだで無情の駆け引きがはじまる。オスもメスも自分から先にパートナーと子供を捨てて、新しい子供をもっとつくりたい。

子供を両親のどちらかが引き取る場合、父親と母親のどちらが多いのだろう?

どのケースになるか、その答えは相互に関連した3つの要因で決まるとダイアモンドは論じている。

  1. 胚や受精卵にすでにどれほど投資したか?
  2. この先、胚や受精卵を育てることでどんなチャンスを逃すことになるか?
  3. 自分が本当に胚や受精卵の親であることを確信できるか?

確かに「投資を回収したい」心理は決定的な要素の1つになりそうだ。

動物も含めて考えても、一般的にオスよりメスのほうが受精卵に多くの投資をしている。ヒトの卵子1個の重量は、精子約100万個分に相当する。それだけ栄養分や代謝機構など、卵子にかけるエネルギーは大きいのだ。

哺乳動物の場合、出産までにメスが費やす時間は長く、さらにメスの時間投資は授乳期間にまでおよぶ。そのあいだは別の子供を出産できないので、ほかのオスと交尾してもメスにメリットはない。

一方、オスはメスの妊娠期間や子育て期間は遺伝上の機会損失を被っている。議員辞職した宮崎氏は「多くの子孫を残す」という遺伝上の至上命題を考えたら、とても正しい行動をとっていたのだ!このコペルニクス的転回には目から鱗だが、だからといって動物行動学を盾に正当性を主張していいものではない。

 

女性が排卵を隠蔽することに関する4つの仮説

人はなぜ妊娠する可能性がない時期にも性行為をするのか?

これは本著を通して貫かれている1つのテーマであり、育て親を決める「3つの要因」の3つ目とも関連してくる。女性が排卵を隠蔽し、いつでも性行為が可能な状態を保っていることについて、ダイアモンドは4つの仮説で解説している。

  1. 排卵のあとでも性的に受け入れ可能状態にすることで男を満足させて、新しい性交相手を探しに行かないようにする説
  2. 大昔の女性は自分の生理日を知っていて、出産は自分の命が危険にさらされるため排卵日の性交を避けてきたが、そうするとその女性は遺伝子を伝えられないことになり、後世に残るのは自分の排卵日を知らない女性になるという説
  3. 排卵の隠蔽が進化したのは、男を家にとどまらせて生んだ子供の父親が自分だという確信を強めさせる「マイホームパパ説」
  4. 逆に女はたくさんの性交相手を得て、その結果多くの男たちに子供の父親が自分かもしれないと思い込ませる「たくさんの父親説」

うーん。どの説が正しいにしても、こうした性をめぐる女性のしたたかな戦略にふれると、まんまとはめられて手中でコロコロ転がされている男性としては体がワンサイズ縮む思いだ。

 

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