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【サイコパス秘められた能力:ケヴィン・ダットン】サイコパシーはあなたも持っている

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サイコパスは凶悪犯罪を起こす人種として認知されている。

ロンドン生まれの心理学者ケヴィン・ダットン著『サイコパス秘められた能力』によると、「史上最悪の犯罪」と呼ばれるほど残虐な犯罪のおよそ50%がサイコパスによるものらしい。

一方で、社会的に成功しているサイコパスもいる。むしろ刑務所行きになったサイコパスよりも圧倒的多数がふつうの職場にいるというのは、少し考えてみれば「まあそうだろうな」と納得できる話だ。

「サイコパス」とはどんな人たちなのか?興味がある人は本著を読んでほしい。きっと一般書の中では、臨床心理学者たちが行った実験結果を数多く盛り込んで説明しているベストな本だ。

《目次》

 

サイコパシーにはスペクトラムがある

この人はサイコパス、あの人はサイコパスじゃない、とはっきり分かれるものではなく、「サイコパシー」と呼ばれる性質は誰にでもあるそうだ。臨床的な診断方法があって、人はスペクトラム(連続的な広がり)のどこかに必ず位置する。中でも極めてサイコパシーが高い危険地帯の住人たちを著者ら専門家は「サイコパス」と呼んでいる。

サイコパシーは1つの質問で測定できるものではなく、診断方法にもよるが数十という質問を含めた臨床的プロセスで診断される。YES/NOで答える簡単な質問から、「囚人のジレンマ」などのゲーム理論に基づいた質問、fMRI(機能的磁気共鳴映像法)という画像診断まで、その診断方法は多岐にわたる。

1つ、本著に載っていた例題を出すので「自分ならどうするか」考えてみてほしい

 

サイコパシー診断の例題

トロッコが制御できなくなって暴走し、五人が縛られているほうへ向かっている。ただし今回は、あなたは路線の上にかかる橋の上で、とても大柄な知らない男の後ろに立っている。五人を救う唯一の方法は、知らない男を突き落とすことだ。男は確実に死ぬだろう。それでも大きな体がトロッコを止めるはずだ。あなたは男を突き落とすべきだろうか。

この問題(ケース2と呼ぶ)は「男を突き落とす」という行動がポイントになる。

似たような問題(ケース1と呼ぶ)で、同じように五人を救う方法が「分岐点でスイッチを切り替えて、一人だけが縛られた方にトロッコをそらす」というものがある。

ケース1はモラルジレンマと呼ばれるもので、関連する脳の領域は推論や合理的思考をつかさどる前頭前皮質と後頭頂皮質という領域だ。

ケース2はパーソナル(感情的)モラルジレンマで、扁桃体と呼ばれる共感の回路がはたらく。

ごくふつうの人もサイコパスも、ケース1のジレンマは短い時間で結論を出す。しかし、ケース2ではふつうの人は結論をなかなか出せない。サイコパスはケース2も短い時間で結論を出し、まばたきひとつせずに平然と大柄の男を橋から放り投げる。

つまり、サイコパスの重要な要素の1つは共感回路の欠落だ。実際、fMRIで画像診断してみても、サイコパスの扁桃体関連の神経系の動きは真っ暗らしい。

 

サイコパスの特徴

感情の欠落以外にも、サイコパスには冷淡さ、説得力の高さ、外見のよさ、うぬぼれの強さ、やましさを感じない、社会的・法的にどんな結果を生もうがおかまいなし、他人の感情には敏感で意のままに操ることができる、サイコパシーを隠して周囲にとけ込むことができる、といった特徴がある。

著者はサイコパスの性質は誤解されやすいと嘆くが、日本にはサイコパスを理解するのにとても適した題材がある。

『悪の教典』だ。臨床心理学の専門家が書いた本著を読んだ後でも、『悪の教典』の蓮実先生はサイコパスの代表例だと言える。分厚い小説を読むのが億劫な人は、映画での伊藤英明の演技が素晴らしくサイコパス的なので、そちらを観ても十分理解できると思う。

 

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