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【方言の日本地図:真田信治】「標準語」採用の歴史を知っているか

歴史 歴史-全般
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今週のお題「方言」

というわけで富山生まれの言語学者 真田信治が大阪大学教授のときに標準語で書いた本、『方言の日本地図』をkindleで読んでみた。

《目次》

 

「標準語」採用の歴史

1902年、当時の文部省のなかに設置された国語調査委員会は、国語・国字の近代化をはかるにあたっての基礎データを得るための政府調査期間でしたが、その委員会がはじめに立てた調査方針に、次の一項がありました。

〈方言ヲ調査シテ標準語ヲ選定スルコト〉

その後、1906年に東京のことばを基本とした『口語法調査報告書』が刊行された。

日本語の標準語というのは、国が定めてからまだたったの110年の歴史だったとは。案外浅いものだ。

 

すさまじい量の定点観測

本著は『方言の日本地図』というタイトルのとおり、さまざまな方言の分布を定点観測で調べている。うーん、気の遠くなる作業量だ。以下に例をあげる。

  • 片付けるのことを「カタス」というか
  • 休み時間を「ホーカ」というか
  • 「しもやけ」のことを「ユキヤケ」というか
  • フクロウの鳴き声を「ノリツケホーセ」というか(ふくろうが鳴くと翌日は晴天であるから「糊付けして干せ」という意味らしい)

自分の住む地域ではどうだろうか?

「ユキヤケ」と「ノリツケホーセ」という地域はかぶっていて、降雪量が多い日本海側と、なぜか飛び火している愛媛県らしい。

ちなみにズーズー弁は暑い琉球列島でも存在するらしく、「気候が寒いために口の開け方が不活発になったので発音が不明瞭になった」という説は正しくない。方言はわれわれ素人が考えるほど単純なものではないようだ。

 

まず言葉を定義する

それにしても上の「ノリツケホーセ」はじめ、方言というものは知らない地域の人にとっては予想すらつかないものだ。

しかし「単語」は全く分からないので聞けばいいが、「語尾」は分かった気になるので逆にクセものである。例えば、ぼくの地元愛知県東部の「三河弁」の代表的な語尾に「じゃんだらりん」というものがある。

  • じゃん:断定、強めの主張の語尾。「だから言ったじゃん」など。これは標準語エリアでも使うのでは?
  • だら:同意を求める語尾。「そうだらー?」など
  • りん:勧誘の語尾。「食べてみりん」など

方言に限らず、勘違いをなくすためには「言葉の定義」をまずはじめに合意しておくことが大切だ。専門家の書く一般書は、大抵はじめに定義をしっかり書いてから本題に移る。

普段の雑談、仕事の会話でも、「言葉の定義」が人によって違うことが理由でムダに話が長くなったりするので気をつけたいところだ。