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【ぼくの命は言葉とともにある】「盲ろう」でも東大教授になった福島智

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どなただったか忘れてしまったのだが、はてなブログの記事がきっかけで読んだ『ぼくの命は言葉とともにある』 。9歳で失明、18歳で聴力を失って、そこから東大教授になった福島智の著作だ。

「これは読むべきだ」と直感して即購入したのだが、本当に良い本だった。kindle版があれば、すぐその場で読めたのだが(早く全部の本でkindle版が出るようになってほしい!)。Amazonで買ってから到着するのが待ち遠しかった。

《目次》

 

絶望=苦悩マイナス意味

「絶望=苦悩マイナス意味。つまり、絶望とは意味なき苦悩である」

これを読んだ瞬間、点字を読む私の両手の人差し指の動きが一瞬止まったと思います。そして、「これはすごい公式だ」と衝撃を受けました。

カッコ内は『夜と霧』のヴィクトール・フランクルが別の著作で書いたことばだ。

福島さんは、ナチスの収容所でギリギリの苦悩を経験したフランクルの公式と自分自身の苦悩をリンクさせ、衝撃を受ける。日々のしんどさに意味を見出すことで、自己崩壊から逃れている自分に気づくのだ。

この公式をよく見て、考えてみてほしい。「絶望」と「苦悩」は違う。「意味」を左項に移項させれば、「苦悩=絶望+意味」になる。意味さえあれば、絶望せずにいられるのだ。

 

点字図書で情報を得るということ

本著の端々からは、盲ろう者である著者の法律や文学、哲学などの教養がうかがえる。東大教授にふさわしい「知」を感じられるのだ。

考えてみると、すさまじいことだ。

福島さんに入ってくる情報量は、われわれと比較すると圧倒的に少ない。視力だけでなく聴力もないのでオーディオブックは役に立たず、読める本は点字図書に限られる

たとえば、このブログ記事を福島さんが読むことはないだろう。新書の書評を書くと著者に届いてリツイートしてくれたりすることがあるのだが、このブログは確実に点字にならないので福島さんが「読む」ことはない。周りの誰かが伝えてくれることも考えられるが、その可能性は極めて低い。

しかし情報源が限られているからこそ、丁寧に深く思考を巡らすことができるのかもしれない。点字での1文字1文字の重さは想像を絶するものがある。

 

福島智の思考の広がり

思考はどこまでも広がる。歴史のなかの現在、現在に生きる人間のなかの自分、地球のなかの人間、宇宙のなかの地球

これら福島さんの思考の断片に触れることができる。それだけでも本著の価値はある。盲ろう者の彼が他の著者の何倍も苦労して残したであろう、貴重な一冊だ。