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【メディア・バイアス:松永和紀】臨床試験のプロの僕が説く2つの対策法

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科学ライター松永和紀著『メディア・バイアス』は2007年に出版された本だが、いまだにあやしげな健康食品の広告がネットや街に溢れていて、とどまることを知らない。

健康情報がウソか本当か惑わされないためにはどうすれば良いのか?

『メディア・バイアス』に書かれた方法論は確かにすばらしいが、そこまでのリテラシーを全ての人に求めるのは困難かもしれない。ということで、臨床試験の専門家である僕の目線で「この2つを覚えておけばいい!」という簡易版の対策を提案する。

《目次》

 

ウソの情報で健康を害する

健康情報番組で推奨される食事を実践した視聴者の中に、健康になるどころか健康を害しているケースが少なくないのではないか、と考えています。

2007年当時、開業医からは「みのもんた症候群」などと呼ばれて嫌がられていたそうだ。「みのもんたさんがいいと言ったから」といって極端な食生活をおくった結果、体の不調を訴えて来院する人が増えていたという。

ここで言いたいのは、ウソの情報に踊らされると健康になるどころか健康を害することもあるという点だ。少し補足すると、たとえ情報にウソがなくても特定のものばかり食べる偏った食生活をしていたら体を壊すのは当たり前だ。すぐに止めてほしい。

 

捏造されたらお手上げ

関西テレビは二〇日に会見を開き、米国での実験の被験者として紹介した写真が無関係であったこと、ショーツ教授は番組で流したような発言をしておらず制作側が勝手に日本語訳をつけたこと、番組内で数人の被験者を集めて納豆を食べる“実験”を行った際の血液検査結果が架空であったこと、などの捏造を公表しました。

ずいぶん前だが、覚えているだろうか?

フジテレビ系列で2007年に放送された「発掘!あるある大辞典Ⅱ」で「納豆がダイエットによい」という特集をしたが、これがウソだったという事件だ。

メディア・バイアス対策として、本著にも「二重盲検法」の話などが書いてある。被験者と観察者の両方に知られないように実薬群とプラセボ群にわけて、被験者や観察者の思い込みによる試験結果へのバイアスを排除するための試験デザインだ。

専門家としてはこういったことを本来細かく語りたいし、語るべきなのだが、はっきり言って捏造されたらお手上げだ。

それらしい専門家の外国人を登場させてウソの日本語訳をつけられたら、架空の実験データを出されたら、信頼できる試験デザインを知っていたところで意味はない。

 

メディアに踊らされない2つの対策

ではどうすればいいのか?僕が考える2つの対策はこれだ。

  • 基本、信じない
  • 論文だけ信じる

非常にシンプルなので、覚えておいてほしい。元も子もないが健康情報は「基本、信じない」というスタンスで向き合うことだ。

そもそも健康方法は何のために発せられるのだろうか?商品を売るためだ。法律で効果をうたい過ぎてはいけないという縛りはあるが、ぎりぎりの中で消費者にアピールしてくる。騙してでも売ってやろうという輩が多い気はしないだろうか?

さらに捏造しているかもしれず、それが真実かどうかは消費者は見破ることができない。きっかけがなければ専門家ですら、捏造は見破ることはできないのだ。

「基本、信じない」というスタンスをとった上で、小保方さんの件など例外中の例外を除いて、科学雑誌に掲載された論文は信じてよい。論文が全く信じられなければ科学の発展はないので、基本、捏造はないだろう。

ただ論文の原著にあたる必要はさすがにない。本当は何でも原著にあたるのがベストだが、そんな時間はないし現実的ではない。具体的な行動としては、「広告で使われたデータの引用元が書いてあって、それが論文かどうか」を判断するだけでよいだろう。

製薬企業の動物実験や臨床試験でも論文化されていない場合が多いが、健康情報は「基本、信じない」というスタンスなので、より慎重に根拠となるデータは論文化されたものからの引用のみ信じるのが、バランスの良い考え方ではないかとおもう。

例えば、これは自分の反省でもあるのだが「コラーゲンなんて体に入れて肌プルプルになるわけがない!」と以前までおもっていた。

動物のコラーゲンが直接人間のコラーゲンになるわけがない。コラーゲンはタンパク質なのでペプチドやアミノ酸に分解されるため、それが人体でコラーゲンに再構成されるとは考えにくいからだ。芸能人が食レポで「お肌プルプルになってきたー!」とか言っているのをバカじゃないかと観ていた。

しかし、いつだか論文で動物のコラーゲンを摂取すると、人体でもコラーゲンができるというデータが出て驚いた。摂取したコラーゲンが直接人の体内でコラーゲンになるわけではないが、分解されたペプチドにコラーゲン生成を助ける作用があるのだそうだ。

というわけで、論文があれば信じて良い。しかし、論文も専門家内で合意形成された結論ではなく1つの研究室での一連の実験結果に過ぎないと、信奉しすぎずに冷めた目線でみることをおすすめする。