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【海獣の子供】NHKEテレ「浦沢直樹の漫勉」五十嵐大介が描く姿をみて

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3月17日、五十嵐大介が絵を描く姿をNHKEテレ「浦沢直樹の漫勉」でみた。

大胆にペンをガリガリと走らせる姿にえも言われぬ感動を覚えた。「サラサラ」ではなく「ガリガリ」なのだ。紙のわずかな凹凸を感知して、踊りながらペンが走る。

《目次》

 

五十嵐大介

美大を卒業し、漫画家になった五十嵐大介。デビュー作は絵描きに没頭するきっかけになった神社のことを描いた作品だ。同じ田舎生まれとして、自分が子供のころに心動かされた地元を描いて発表できるなんて夢のように嬉しいことだろうと想像する。

 

第一話のはじまり

海のはなしをしよう。

まだ誰も知らない海の物語を。

1ページ目から画面に目が釘付けになる。 絵が綺麗。線が綺麗。

タッチは少し松本大洋に近い。線が人に、海に、雨に、木になっていく。デビューから20年、作品数は多くないが遅筆には理由があり、彼のかけた時間が1枚1枚に詰まっている。

 

プロセスを意識して鑑賞する

「全体を覆っているミステリー感」。浦沢さんは五十嵐さんの作品をこう表現した。ストーリーだけでなく、キャラクター越しに描かれる風景にそれは現れているようにおもう。

五十嵐さんは「風景を描きたいがために漫画家をやっている。アシスタントには風景を描かれるぐらいなら、キャラクターを描いてもらう」と語る。

丁寧に絵が描かれていくプロセスを目にすると、セリフを追ってサクサクとページをめくるのではなく、1つの絵、1つの線をじっくり眺めながら読み進めたくなる。

読み方に影響が出るほど、漫画が描かれるプロセスをみることは貴重な体験だ。NHKEテレ「浦沢直樹の漫勉」は伝説的な番組になる予感がする。少なくとも僕のなかでは。

漫画の描き方は本当にさまざまだ。これは活字を作品にする作家も同じだろう。心のなかで葛藤しながら何度も書き直して前に進める作家もいれば、一気に書き上げて校閲だけする人もいる。

漫画も本も、そこには「人」が間違いなくいて、わたしたちとつながっている。「作品を鑑賞する」という行為を、いっそう大切にしたい。

 

ディザインズ

番組で密着していたのは半獣半人を描く『ディザインズ』。『海獣の子供』もしかり、自然と動物と人間の境界線のないつながりのようなものを描きたいという動機が伝わってくる。