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【意思決定のための「分析の技術」:後正武】知っておきたい!4つの技術

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1998年出版とかなり古い本だが、『意思決定のための「分析の技術」』は開くたびに感心させられる。「これを次使ってみよう!」とおもわせるチップスが、そこかしこに散りばめられている。

コンサルタント山口周は『意思決定のための「分析の技術」』を自著の「ビジネス書マンダラ」で中央に配置している。つまり、全てのビジネスパーソンが繰り返し読むべき基本の本としてあげているほど推している一冊だ。

【外資系コンサルが教える読書を仕事につなげる技術】本を読んだら「イケス」に魚を放て - 引用書店 

《目次》

 

「技術」とは

人が見ると、一見「驚くような発想や鋭い分析」も、実は、そのかなりの部分は「技術として整理し、修得し、自覚して使いこなせるようになれる」ものなのである。「能力」として考えるととてつもなく見えることも、技術として学び、実用すると、身につく場合が多い。

優れた実用書は、ほぼ例外なく「用語の定義」をまずはじめに明記する。東大法学部、ハーバードMBA、マッキンゼーと分かりやすいエリート街道を進んだコンサルタント後正武はさすがで、どの著書でもこれでもかと言うほど用語の定義をしっかり読者に示す。

後さんはフィレンツェの美術館で模写により「画を描く技術」を学ぶ画学生との会話で「技術」を説明している。画家の能力に依存しそうなアートですら、作品の一つひとつは複数の「技術」に支えられて構成されているのである。それであれば「考える力」ともいえる「分析の技術」も、学習して使いこなせる対象であるという説明は確かに納得できる。

 

4つの分析の基本技術

分析の基本技術として、著者は次の4つをあげている。

  • 大きさを考える
  • 分けて考える
  • 比較して考える
  • 時系列を考える

大きさを考える

大きさの程度(オーダー・オブ・マグニチュード)という考え方が何より重要。つまり、考える対象の全体としての大きさの程度、施策の利きの程度を把握して、まず重要度を判定する。そのあとに、施策による影響が大きいところに手をつけるべきだ。

「80対20の法則」と呼ばれ、例えば100品目の商品があるとすると売れ筋の上位20品目で全売上の約80%を占めるものだ。手をつけたら動きが激しくなる点にしぼってリソースを集中投入することが成功の鍵であると説く。

分けて考える

分析の「分」の字は、八(左右に分けるしるし)と刀とを組み合わせたもので、一つのものを二つ以上のものに分け離し、別々にすることを表し、「析」の字は、斤(おの)と木の組み合わせで、木を斤で細かく切り離すことを表わすそうである。

ものごとを考えるときに「分析」という言葉を使うのは、個々の要素に分けて、吟味することによってはじめて本質をとらえられるという経験則からきている。分け方についてはMECE含め具体的な技術の説明があるが、そこは本著を読んでほしい。

ここで忘れてはならないのは、各要素を吟味するときに、次には法則や仮説を立てて、結論を導きだすという意図をあらかじめ持っておくことである。

比較して考える

「分析する」は英語でAnalize。これと似た用語にAnalogy(類似、類推、比較)という言葉がある。この2つが類語として存在していることは、比較する対象がないと分析はできないという本質とあっている。

例えば、平均年収を知らなければ自分の年収が多いのか少ないのかは判断できない。業界の平均年収を知らなければ、業界のなかでの自分の価値や会社の状態というのも理解できない。

時系列を考える

なぜ現在の状況がそこにあるのかを「過去との関連」において見極めることが必要となる。

歴史をみないと現在は語れないという原則は、社会や政治の世界だけではない。一企業、一製品とミクロな視点においても、過去の戦略に焦点をあてなければ現在は理解できないし、ましてや次に打つ効果的な手など考えることができない。

 

名著は繰り返し読む

冒頭で書いたが本著は1998年出版と結構古い本だ。しかし身に染み付いて、血肉化して本に書かれた「技術」が使えるようになるには、新しさや古さにとらわれずに繰り返し読むという態度が肝心だ。

いわゆる古典と同じことだが、ビジネス書としては古典といっても良さそうな2000年以前の名著たちにも目を向けてみたいところだ。