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【若者よマルクスを読もうⅡ:内田樹/石川康広】日本人よ!世界を救うのはお前たちだ

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いやいや、社会主義ですか今更?

『若者よマルクスを読もうⅡ』 というタイトルをみて、第一印象がこれだった人は少なからずいるのではないか。

そんな方たちに、今回は「日本人がマルクス主義で世界を救うときが来るかもしれない」という話を書く。

《目次》

 

マルクスが読まれない理由

著者らは、日本だけでなく世界中でマルクスが読まれなくなったと嘆く。なぜ誰もマルクスを読まなくなってしまったのか?

  • アメリカは1950年代なかば、「マルクス主義者ではない」と宣言することが生きるために必要な時代を通過
  • 知識人たちは自分が強権に屈して放棄した思想をもう一度取りあげることはしないため、今でもアメリカでマルクスは読まれないまま
  • 旧ソ連は1991年にマルクス主義と決別し、国家資本主義に路線を切り替え
  • ロシア国内にマルクス主義の歴史的役割に期待する人はいない
  • 中国共産党は「マルクスの政治的理想を実現した国家」ではなく、そうおもっている中国人もいない
  • 韓国はマルクスを読むだけで投獄された1961年から80年までの法律「反共党」の影響で、マルクスは読まれないまま
  • インドネシアは共産党関係者が1965年に大量虐殺されてから、今でもマルクス主義はタブー

これでも一部だが、上記のような理由で「マルクスが読まれない」状態が世界中で続いているそうだ。

 

日本は例外的な国

マルクスの全著作どころか草稿も翻訳されていて、それについて膨大な研究書もあり、マルクスの理想の実現を掲げる政党が国会に議席を持っている。そんな国は日本とフランスしかないらしい。

仏教は発祥の地インドで存在そのものが消え去って、日本が世界の研究の中心地になっている。これと同じ運命をマルクス主義もたどるのかもしれない、と著者らは書いている。

「マルクスが読まれない」国をあげていくと、消去法で日本ぐらいしか残らなくなる。度重なる1900年代の戦争・紛争の影響で、敗戦国のもととなった思想が排除されていく。そして最後には、太平洋戦争では敗戦国の立場だった日本にマルクス主義の思想がひっそり残っている。

この歴史に翻弄された一つの思想の巡り合わせは、何とも不思議な感覚に僕を陥らせる。

 

日本人が世界を救うのか

マルクス主義はその「辺境に奇跡的に生き残っていて、最後に世界を救うアンチウイルス」かもしれない。

これを読んで、「ダイバーシティ」という言葉を頭に浮かべた。能力、性別、年代、出身国と多様な性質の社員を雇うことが会社の成長につながるという考え方だ。(実のところ「能力」の多様化のみが重要で、性別や年代、出身国がバラバラ過ぎると団結力がなくて逆効果、という経営学者の報告もあるようだがそれはまた別の話)

ダイバーシティのない画一された社員で満たされた会社のように、世界中の人たちが同じような思想をもっていると、一つの危機に直面したときに組織全体が全滅してしまうリスクがある。別の考え方、対処法を持てないからだ。危機が迫ったとき、思想の種類の多さは、そのまま対処法の多さになる。

新自由主義が行き過ぎて破綻するとか、そういった危機が起こったときに、日本で生き残ったマルクス主義が再び広まり、世界を救う。なんてことが本当に起こる可能性もゼロではない。

マルクスも「日本人よ!世界を救うのはお前たちだ」と草葉の陰から見守っているのかもしれない

 

『若者よ、マルクスを読もう』