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【「歴史認識」とは何か:大沼保昭】日本人なら一度は学んでおきたい!

歴史 歴史-戦争
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「歴史認識」ということばを、昨年2015年は報道でよく耳にした。安倍首相の戦後70年談話が注目を集めたためだ。

平成27年8月14日 内閣総理大臣談話 | 平成27年 | 総理指示・談話など | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ

中国や韓国との領土問題、韓国との教科書問題。これまで日本が歩んできた満州事変、慰安婦、南京事件、東京裁判、日中国交正常化といった戦時や戦後、それ以前から紡がれてきた日本の「歴史」を、一度腰をすえて学んでおくべきではないだろうか。

『「歴史認識」とは何か』は、日本の戦時と戦後史を中心に文庫ながら十分に学べる良書だ。

《目次》

 

東京裁判は近代法の基本原則に反する

1931年の満州事変だけでなく、37年の日中戦争、41年の真珠湾攻撃とマレー半島上陸作戦の当時も、国際法上違法な戦争をおこなった者が刑事責任を問われるという観念は確立していなかった。ですから、東京裁判は侵略戦争の認定という点では正しかったわけですが、「平和に対する罪」で被告人を裁いたという点では事後法による処罰であり、近代法の基本原則に反するという批判を免れない。

太平洋戦争の一連の戦闘を中心に訴因(東京裁判の訴因は55もある!)とされた東京裁判は近代法の基本原則に反している、と著者は主張している。

日本側がおこなった戦争を肯定するわけではないが、ニュルンベルグ裁判とあわせて東京裁判が「侵略戦争は国際法上違法だ」という基礎をつくったということだ。あらためてわれわれ日本人が遅すぎた帝国主義によって起こした侵略戦争が、「戦争」という人類にとっては縁の深い歴史について世界の常識を形づくっていったのだということを思い知らされる。

 

中国不参加のサンフランシスコ講和会議

中国については、米国は1949年に国共内線に敗れて台湾に逃れた国民党政権の中華民国を承認していました。一方イギリスは、中国本土を支配した中華人民共和国を承認していた。対日講和の中心となる米英二国間で明確な対立があったため、両方とも講和に参加させないことにしました。

なぜ日本の侵略戦争の主な被害者であった中国がサンフランシスコ条約の締結に参加しなかったのか、専門家ではない僕は不思議だったのだが、この記載で疑問が晴れた。

ちなみに、日本と台湾は米国の圧力でサンフランシスコ条約の発効日に「日華平和条約」を結んだ。そこで「サンフランシスコ条約に基き」という書き方をして、米国が認める当時の中国と日本は実質サンフランシスコ条約を締結したと同じ状態になったのだ。

 

戦後の占領から復興まで

本著には戦後、日本が歩んできた歴史についても書かれている。

「賠償ではあるが、日本が経済的に繁栄するために必要な投資」として輸出で稼ぐインフラ整備をした吉田茂首相の思惑。「無限に頭を垂れる」ことなどできないけど、だったらいつまで謝れば良いのだという70年談話にもつながる考え方。日本軍の慰安婦問題ばかりが注目される理由。

時代を読めず「脱亜入欧」でヨーロッパに倣ってアジア諸国に侵略戦争をしかけた日本、その後整備された国際法、戦時の「歴史認識」に対する戦後の日本の態度。これらに関する専門家の考察が一冊につまっているので、ぜひ手に取ってほしい。