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【はじめてのヘーゲル『精神現象学』:竹田青嗣/西研】さらに分かりやすく解説してみる

哲学 哲学-近代
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ヘーゲル『精神現象学』は哲学書のなかでも難解といわれている。

それを分かりやすく解説した本が「はじめてのヘーゲル『精神現象学』」である。そしてさらに分かりやすく解説してみようというのが、この記事での試みである。もちろん解説する部分はかなり限定されている。

《目次》

 

仮説自体が主観によるもの

「対象」には二つの契機があって、一つが「対他存在」(=知)、もう一つが「自体存在」(=真)である。

つまり、あるモノに対する自分の認識である「知」と、モノの本質である「真」の2つのあり方が存在するのである。

われわれは自分の主観である「知」の世界から脱出して、自分がモノを認識している「知」とモノ自体の「真」が一致していることを確認することはできない。

しかし、実はこの「知」と「真」に分けるという仮説自体も、人間が主観のなかでつくりだした区別なのである。デカルト、カントが提示した「主観」はどこまでもいっても「客観」に達しえないという難問(アポリア)は、「いやいや前提が違うでしょ。対象を2つに区別するというやり方自体が主観なんだからそりゃ答えは見つからないよ」という態度でヘーゲルによって解決されたのだ。

 

仮説をアップデートし続ける

意識は、正しいと思っていた自分の「知」が「真」に一致しないことを見出したとき(ああ、これかと思っていたら、つぎに違う面が出てきた)、一致を求めて自分の「知」を変えようとする。そして、これがほんとうの「知」(つまり真に一致している)だった、と考える。

「知」と「真」に分けるという考え方自体が、主観による仮説であるということをまず念頭におく。その上で仮説のなかの「知」を「ああ、これかと思っていたら、つぎに違う面が出てきた」と気づいたときにアップデートする。

そうすると、仮説のなかの「真」も実はアップデートされた「知」に近いものだったことがはじめて分かる。

このように仮説のなかの「知」→「真」のアップデートを繰り返すプロセスこそが、対象への認識を高めていく「経験」なのである。

これってビジネスの考え方と全く同じではないだろうか。新しい事業をはじめるときには、まず調査をして売上や費用といった見積を含めた仮説を立てる。実行段階になって、「あ、最初の見込みは外れていた。だったら仮説を修正して進めよう」ということはよくあるはずだ。

仮説をアップデートし続けるという行動は、実はビジネスでも使われているロジカルなもので、人間の対象に関する認識という難しそうな哲学的問題もこれ一択で解決できる。そして、この解決法を見出したことがヘーゲルが歴史上で偉大な哲学者とされる理由の一つなのだ。