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【ユニ・チャーム共振の経営:高原豪久】コミュニケーションの回数と方法

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コミュニケーションって難しい。

自分は伝えたと思っていても、相手に伝わっていない。伝わらなければ、言っていないのと同じだ。

トップダウンでもボトムアップでもなく経営と現場が「共振」する姿を理想とするユニ・チャーム社長高原豪久の『ユニ・チャーム共振の経営』から、伝わるコミュニケーションのコツをまとめる。

《目次》

 

「カリスマ経営」から「共振の経営」へ

2001年、ユニ・チャームは創業者から当時39歳だった高原豪久への社長交代を発表した。

高原新社長は創業者である先代社長が1人で会社を牽引する「カリスマ経営」からコミュニケーション重視で経営と現場がつながって呼応しあう「共振の経営」に転換することを決める。

 

コミュニケーション回数の法則

多くの人に伝えるとき、何回同じことを繰り返し言ったらしっかり伝わるのだろうか?

答えは

  • 伝える対象が100人なら10回
  • 25人なら5回
  • 9人なら3回
  • 4人なら2回
  • 1人なら1回

さて、ここで問題

この法則を式で表すと?

「N人に一度にコミュニケーションする場合には、√N回のコミュニケーションをしないと、1人ずつコミュニケーションしたときと同じ効果は生まれない。(後略)」

簡単でしたね。これはボストンコンサルティンググループ菅野寛『経営者になる 経営者を育てる』を読んで、高原社長が実践していることだ。

ユニ・チャームは全世界に2万人の社員がいるので、√N回に当てはめると、同じコミュニケーションを141回繰り返す必要がある。高原社長は毎週月曜日の朝一番にイントラネットにコラムをアップし、重要な課題は何度も繰り返し発信し続けているそうだ。

 

順境に流行る5つの病

コミュニケーションは「伝える相手がどんな人か」を見極め、その人に響く方法をとるべきである。

例として、ユニ・チャームの経営が成長軌道に乗ったとき高原社長は「順境に流行る5つの病」への対処を実践した。

1.「インテリやくざ」の遺伝子

頭の回転が早く、情報通である一方、すべてにおいて他人事のような態度で、いつも人を見下したような、カチンとくる物言いをするのが特徴です。

いるいる、このタイプ。対処法は、現場に出向かせて真実を直視させ、素直に現状認識を改めてもらうこと。

2.「職人」の遺伝子

ビジネスでは「職人」といえば、悪い意味で使われることが多い。

本来ならば「一つの道を極めた尊敬すべき人」という意味で使われるべきだが、ここでは「一つの部門に長期間在籍して過去の積み重ねと既に陳腐化した伝統を壊すことの出来ない人」という意味だ。

職人への対処法は、全体最適の観点で優先順位の高い目標は何か、なぜその目標を取り組む必要があるのか、部門の垣根を越えて対話を徹底し、自分の言葉で語れるレベルまで理解を深めてもらうこと。

3.「思考停止」の遺伝子

「いままでのやり方を変える必要がないと思い込んでいる」または「いままでのやり方から脱却しなければならないと感じていても具体的にどうすればよいか分からない」人だ。

こういう人たちには「ビジョン」とかいった全体的な観念論ではなく、実行計画を詳細に伝え、本人につくってもらうことが有効な対処法。

4.「現実逃避」の遺伝子

何もやってないのに「ダメでした」とか言っちゃう現実逃避気味な人への対処法は、「できませんでした」「わからないので教えてください」と言える環境づくりをすること。とにかく、まずは現実の世界に戻してやって、他人との比較ではなく自身が一歩一歩進めるようにする。

5.「近視眼」の遺伝子

思考が短絡的で、自分本位や自部門中心にしか物事を考えられない人。社歴が浅いとそうなりやすい。

こういう若手には、短期的な成果を求めず、中途半端に仕事を終わらせないようにすることが良い対処法だ。他部署と連携する仕事を先輩がカバーしすぎずに、しっかりとウォッチしながらも最後まで任せること。

 

本を読んだら実践する

「順境に流行る5つの病」は高原社長オリジナルの理論ではなく、コンサルタント出口知史と心理学者伊藤明の共著『困った人の説得術』を参考にしたものだ。

√N回の法則といい、ビジネス書を読む社長は珍しくないが、ここまで読んだ内容を実践して大っぴらに言っちゃう社長は珍しいのではないだろうか。

本を読んだら実践する」、この基本を忘れず実用書はしっかり現実に落とし込んで活用したい。

 

日本経済新聞で連載中

ユニ・チャーム高原社長を知ったのは日経の連載コラム。会員の方は、これを機会に読んでみては。毎回安定の面白さなので、僕は日経の「Myニュース」機能に入れて楽しみにしている。

www.nikkei.com