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【死体の再鑑定:上野正彦】「再鑑定」って何だか知ってますか?

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妙に惹かれるジャンルの本ってないだろうか?

僕の場合は犯罪系(特にサイコパス系)、諜報系、虐待系がそれだ。

《目次》

 

著者は監察医

著者の上野正彦は、解剖5千体を含む検死2万体を経験してきた元東京都監察医務院長。1929年生まれ米寿手前で、ベストセラー『死体は語る』を書いた1989年には既に監察医務院を退官後だったそうだ。

 

再鑑定は1.5%

本著は、例えば警察から「交通事故で処理したが、殺人の疑いが出てきたので再鑑定してほしい」という依頼があったときの「再鑑定」にスポットを当てている。

別の鑑定医が一度結論を出したあとに「やっぱりそうなのか?」と事件性が疑われたときに限定されるため、再鑑定の数は限られる。

上野さんの経験では検死2万体のうち「300件以上」と書いているので1.5%強の割合だ。

 

死体は何を語るのか

だが、やはり死体は語っていた。

「私の顔を見てください。砂利がついていないでしょう。私はうつ伏せではなく、仰向けの状態で車に轢かれたのです」

本著では9件の再鑑定事例が紹介されている。

引用した事例では、母親も含めた犯行グループが「娘が自転車で坂を下りているとき段差で躓き、上半身が車道に投げ出され、うつ伏せの状態でそこを通りかかった自動車に轢かれた」というストーリーで供述していた。初回の鑑定ではまんまと騙されたわけだが、上野さんの再鑑定で暴かれたという事例だ。

人によるだろうが、僕は「こんなサスペンスドラマみたいなストーリーが現実にあるものなんだな」「上野さんの再鑑定はすごいなあ」という単純な感想は抱かなかった。

これは氷山の一角で、水面下には真相が暴かれずに終わる完全犯罪が相当数眠っているはずである。そういう世界を自分たちは生きている。

 

非日常は日常のなかで起こる

【殺人犯との対話:小野一光】人は人をなぜ殺すのか、殺した後に何を考えるのか - 引用書店

『殺人犯との対話』を読んだときもそうだが、犯罪系の本を読むと日常と非日常は地続きということを忘れてはいけないとつくづく思う。朝起きて仕事してという日常と平行して、多くの非日常が今も繰り返されている。