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【木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか:増田俊也】戦前〜戦後を生きた格闘家たち

歴史 歴史-戦争
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プロローグで岩釣兼生が全日本プロレス入りするシーンからはじまる。

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は戦前戦中、そして戦後を通して十五年間無敗のまま引退し、「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と謳われた超人の隆盛と凋落のストーリーである。

《目次》

 

木村の念書

しかし念書をよく見ると《日本選士権》と書いてある。戦前、柔道の全日本選手権は「選士権」と言った。木村の癖が出ている。間違いなく木村が書いたのだ。

この書面内容について木村と力道山は延々と話し合いを続けたが、両者が納得する着地点が見つからなかった。あくまでプロレスであるとしながらも、やはりセメントを意識しての腹の探り合いがあったのだ。

著者の増田俊也の取材力と洞察力のすさまじさが感じられる部分だ。

木村はあくまでもプロレスとして試合に臨み、それを念書に書いた。対して力道山はいくら言っても念書をうやむやにして出さず、着々とセメントで倒すことを考えていた。

 

戦前〜戦後を生きた格闘家たちのストーリー

GHQが日本から去ったのは昭和二十七年(一九五二)、それからまだ二年しか経っていなかった。

木村と力道山の世紀の一戦が行われた年のことである。

戦前〜戦後にかけて激動の日本を生き抜く格闘家たちのリアルな姿、これが本著の魅力の一つだ。

師匠の牛島辰熊は木村を育てたあとに政治色を強め、石原莞爾の東亜連名論に傾倒していく。空手家の大山培達もそれに共鳴する。

それに対して木村は全く政治思想を持ち合わせずに、ピュアな格闘家として生活していく。

同じ時代を生きても、人の価値観は違い、どう生きるかは個人次第なのだ。

 

漫画もある