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【「甘え」の構造:土居健郎】日本人はみんな甘えん坊?

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初版は昭和46年、僕の生まれる随分前に書かれた『「甘え」の構造』。日本人の価値観や言葉は「甘え」を中心に広がっているという説に基づいた本だ。

《目次》

 

著者の心地よい謙遜

私は本書で、自分は国語学者でも社会学者でも文明史家でも哲学者でもないのに、本来これら専門家が扱って然るべき事柄にまで言及した。したがって随分見当ちがいのことものべていはしないかと思う。

著者の土居健郎は東京大学医学部を卒業して留学後に同教授を務めた精神科医。つまるところ、かなりの秀才だ。にも関わらず、専門外の一般書を書くことへの彼の謙遜ぶりには心地よいものがある。

最近の著者たちは門外漢の内容を述べることへの遠慮のなさどころか、何ら専門性のないくせにしたり顔で堂々と持論を展開している場合が多い。

電子書籍もできて出版ハードルが下がったことも影響しているのだろうが、いくら「本を書く限りは自信満々で断定すべきだ」というポリシーに立っているとはいえ、少しは謙遜してほしいものだ。

読者としては、あまりに断定的すぎると逆に不安になる。この事実にいい加減気づいてくれ。

 

欧米にはない「甘え」という概念

私が発表した論文は「甘え ー 日本人のパーソナリティ構造を理解するための鍵概念」と題された。

米国に留学し、そのまましばらく精神科医の仕事をしているうちに、著者は「甘え」という概念が欧米には存在しないことに気づく。

以来、精神科医として「甘え」をもとに考察した論文を何本も科学雑誌に載せ、学会発表を繰り返してきた。

 

「甘え」から派生する言葉

日本語には甘えの心理を示すものとして、ただ「甘える」という一語だけが単独に在しているのではない。それ以外に多数の言葉が甘えの心理を表現している。

例えばこのとおり。

  • すねる:素直に甘えられないからそうなる
  • ふてくされる、やけくそになる:「すねる」の結果起きる現象
  • ひがむ:自分が不当な扱いを受けていると曲解することであるが、それは自分の甘えの当てがはずれたことに起因している
  • ひねくれる:甘えることをしないで却って相手に背を向ける
  • うらむ:甘えが拒絶されたということで相手に敵意を向ける

若干強引なところもあるが、他にも「たのむ」「とりいる」「こだわる」「気がね」「わだかまり」「すまない」「なめる」といった心理状態や行動も、すべて「甘え」をもとにした日本オリジナルの概念だと書いている。

 

内で甘えて外で厳しい日本人

身内にべたべた甘える者に限って、他人に対しては傍若無人・冷酷無比の態度に出ることが多いように観察される。

これは確かにそうだ。追補すれば、逆も真だ。つまり、他人に厳しい人ほど甘えられる世界を何処かに持っている

内弁慶はこれとは一見逆に見えて、実は同じだ。家の中では威張って、外では萎縮してしまう。威張れるのは身内に甘えているからで、萎縮するのは外の世界に身構えているから。身構えた結果、萎縮するか傍若無人になるかは個人の性格次第だろう。

ムラ社会とか女子のコミュニティも同じ日本人特有の構造だと僕は感じる。仲間内には甘いが、「こいつは仲間じゃない」となると一転して排他的な態度をとる。ムラ社会は日本人だけでなく中国人とか、アジア全般に浸透している構造のようにもおもう。

排他的になりすぎると周りがみえなくなり、行き過ぎると新興宗教みたいになる。僕らが住む国は「洗脳」がはびこりやすいところだということを、頭の片隅に入れておいた方がいい。