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【独裁者の最強スピーチ術:川上徹也】3つの黄金律で人を惹きつける

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悪用はしないように、読んで頂きたい一冊。

《目次》

 

「スピーチこそが最強の武器」と知っていたヒトラー

「民衆の圧倒的多数は、冷静な熟慮よりもむしろ感情的な感じで考え方や行動を決めるという女性的素質を持ち、女性的な態度をとる」(上巻 第六章 戦時宣伝)

本著で引用された、ヒトラーの言葉だ。

ヒトラーは「スピーチこそが最強の武器」であることを熟知していた。歴史上「独裁者」と呼ばれた人物、例えばスターリン、ムッソリーニ、毛沢東、金日成、ポル・ポト、フセイン、カダフィらと、ヒトラーには決定的な違いがある。

ヒトラーが革命やクーデターではなく、民主主義のルールに則って選ばれたという点だ。

ヒトラーは、「大衆は提供された素材を消化することも、記憶しておくこともできない」愚鈍な存在であることを知っていた。だからこそ、単純なフレーズを何回も何回も繰り返して語ることで民衆を魅了していった。

彼は語る内容だけではなく、テーマ曲を決めて流したり、人間の心理的バリアが一番弱まる夕方に、人ごみをつくってスピーチをするという「時間」や「環境」にもこだわった。

 

3つの黄金律

①何かが欠落した、もしくは欠落させられた主人公が、

②なんとしてもやりとげようとする遠く険しい目標・ゴールをめざして

③数多くの障害・葛藤・敵対するものに立ち向かっていく。

この3つの黄金律をスピーチに入れると、聴衆を感情移入させて行動に駆り立てられると著者は書いている。

さらにヒトラーの場合は①の主人公を、「ドイツ」と「自分自身」の2つをシンクロさせて語った

①どん底状態の当時のドイツが、②かつての帝国のように隆盛をとり戻すべく、③「敵」と設定した他国やユダヤ人に立ち向かっていく。

これを①たった7人ではじまったナチス党のヒトラーが、②ドイツを復活させるべく、③ナチス以外の政治勢力による障害を乗り越えていく、というストーリーに重ねているのだ。

①の主語が違うだけで、②、③の目的をほぼ合わせている。うまいのは、②と③は完全に同じではなく、ヒトラー個人にとって敵対勢力である「ナチス以外の政治勢力」をまるでドイツの敵であるかのように誘導しているところだ。

 

悪用はダメだけど、応用したいテクニック

他にも、ヒトラーの演説は小技が光る。

  • 数字の多用(リズム感と具体性)
  • 同じ言葉を、表現を変えて繰り返す(刷り込む)
  • 二者択一を迫る(自分が選んだ感を出す)

もちろん、本著でも読者が独裁者になることを薦めているわけではない。悪用はダメだが、ビジネスで人を惹きつける手法として活かしたいところだ。

 

「やりたいこと」と「情熱」がまず大事

僕は結構面白くこの本を読んだし、活かせるところもあると感じた。

だが、結局は「やりたいこと」と「情熱」がなければはじまらないスピーチ術はたかがテクニックの1つだ。英語とか論理的思考も同じだが、能力やテクニックは「やりたいこと」を実現させるためのツールでしかない。

自己成長も大いに大事だ。しかし、「やりたいこと」と「情熱」がなければ、自分が成長したって何も世の中に影響を与えられない。

まずは能力を上げるところからはじめる人もいるだろうが、僕は「まずはやりたいことを決める!次に能力を上げる!」という方が効果的だし、長続きするし、人を巻き込んで世の中を変えていく正しい順番だと信じている。