引用書店

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

THE INYOSHOTEN PLUS

書評を中心に、伝えたいことをplus

【「余命3ヵ月」と伝えるときの医者のホンネ:奥仲哲弥】患者のお役立ち情報が満載!

スポンサーリンク

5月のkindle月替わりセールから、今回はTBS「サンデージャポン」隔週レギュラーも務める医師 奥仲哲弥著『「余命3ヵ月」と伝えるときの医者のホンネ』。

患者の立場として役立つ情報が満載の、次に病院行く前に読んでおきたい一冊だ。

お役立ち情報を1つずつ、普段から医師と接している僕(5月2日も暦通り仕事で医師と面会していた)がコメントを加えながら「これは!」と思うものを紹介していく。

f:id:inyoshoten:20160503075350j:plain

(引用:奥仲哲弥のプロフィール|タイタン

《目次》

 

1. わからない言葉が出てきたら素直に聞こう

医者がよくわからない言葉をしゃべっても、決して偉ぶっているわけではないのです。

わからない言葉がでてきたら、「それは何ですか?」と聞いてあげてください。

病院に行くときに大前提として持っておきたい認識は、診断も人とのコミュニケーションであるということ。

人と話すとき、あなたは何に気をつけますか?

常識ある人であれば話し相手のタイプに応じて反応を変えたりして、円滑に会話が進むようにするはずだ。医師と話すときも全く同じで、診察での会話も日常会話の延長とまずは思った方がよい。

医師の特徴は勉強ができて、ほぼ全員が「理系人間」であることだ。著者は例外で自分は文系脳だと言っているが、こういう人は珍しい。理系人間は、基本的にコミュニケーションが苦手なタイプが多く、自分の世界に入りやすい。僕は薬学部卒だが、やはり周りには理系人間が多く、人と話すのが苦手な人が一定数いた。

では、自分の世界に入りやすいとどうなるか?

自分が学んだ言葉をそのまま口に出してしまうのだ。相手の常識を予想できないので、自分の世界だけで発する言葉を構築してしまう。本著に挙げられている例だと、「リンパ節廓清」と、ただ切り取るだけなのに「廓清」という難しい言葉を医師は使う。

著者によると難しい言葉は「つい使ってしまう」のであって別に偉ぶっているわけではないそうなので、どんどん質問しよう。

 

2. 内科医は学者系、外科医は体育会系

内科医を選ぶ人はじっくり取り組む学者タイプが多く、診断を下すまでの過程を大事にします。一方、外科医になる人は即決型の運動部タイプです。

これも覚えておきたい。医療業界ではよく語られることなのだが、「内科医は学者系で外科医は体育会系」という傾向がある。外科の中でも整形外科などはゴリゴリの体育会系社会だ。何度か整形外科で診察を受けた経験がある人は何となく雰囲気を察知しているのでは。

さて、なぜ内科医と外科医の特徴を知っていると良いか?

まずは忘れてはいけない「診断も人とのコミュニケーションである」という点。内科医は理系の中でもコミュニケーション苦手タイプが特に集まるので、「わからない言葉はすぐ聞く」という対象法が特に有効だ。

もう1つ、これは人のタイプだけでなく医学のとらえかた(ポリシー)も関係しているのだが、内科医は検査に検査を重ねて慎重に治療法を検討する。一方、外科医は画像所見で怪しいと思ったら即生検(細胞をとって検査)して、結果が悪ければすぐ手術をしようとする。こういう治療方針の意思決定プロセスを知っていると、少しは医師と話しやすくなるはずだ。

 

3. 診断と治療方針は医師に任せる

私たち専門家は、ネットや本や論文には載っていない例外や失敗例もたくさん見ています。そう説明しても、自分の知識をひけらかそうとしたり、治療法を独断で決められると、「困った患者」と思われて損をします。

これ、よく現役医師が言ったなと思う一節。

本当に困っているからこそ敢えて書いたはずなので、あなたは知識をひけらかして治療法を独断で決める「困った患者」にならないでほしい。医師も人間なので、「困った患者」には冷たい対応をせざるを得なくなり、損をするだけだから。

ちなみにこの言葉は、2種類の患者さんに向けて書かれている。

1つ目はがん等の重い病気で、自分のがん種やステージで同じ人の治療例を見つけて「この治療をしてくれ!」という患者さんだ。なかには希望の治療を施してくれる医師を求めてセカンドオピニオンで全国の病院を渡り歩く患者さんもいるそうだが、素人がはじめから決めつけて治るほど医学は甘くない。

2つ目は「風邪なので、自分に合う●●(薬剤名)を出してほしい」という患者さん。医師は薬を処方してくれる便利屋ではない。著者は、そういうとき「えっ、診断は任せてもらえますか」と言いたくなるそうだ。

医師は専門家で、あなたは素人だ。これを忘れず、敬意をもって判断を医師に委ねよう。

 

4. 安易に大学病院に行かない

大病院では「高度な医療を提供する対価」として選定療養費が加算されるので、初診料が高くなります。たとえば、慶應義塾大学の初診料には別途5400円が加算されます。ちなみにこれは、軽症の患者さんが大学病院にこないようにするための政府の戦略なのです。

これも切実そうなので紹介する。大学病院に大量に有象無象の患者さんがくると、専門医が重点的に診たい患者さんに十分な時間を避けないので困るそうだ。

また、患者にとっても待ち時間だけ長くかかって肝心の診察は数分で終わり、会計は余分な加算で高くつくというデメリットだらけ。安易に大学病院に行くのはやめて、基本は地元のクリニックに行こう。

 

おまけ:ちょっとした違和感

「患者さんと我々の立場は対等」とは、医者のタテマエ。「先生」とおだてたほうが患者さんは絶対得です。

「さん」づけで呼ばれるとベテラン医師は違和感を感じるようだ。「先生」とおだてたほうが得というのは、まあそうなんだろうけどね。ちょっとこれを本で書いちゃう感覚には僕は違和感を感じる。

当然僕も仕事では「先生」と呼ぶし、本人がいない会社内の会話でも当たり前のように「先生」とつける。しかし、ひとたび仕事を離れて患者の立場で診察を受けたら、本人がいないところでは基本は呼び捨てにしている。みなさんもそんなものではないだろうか?

患者の立場からしたら、医師は頼れる専門家だが所詮1人の人間だ。特別視する必要は僕はないと思う。

著者は「患者様」という呼称が医者を疲弊させるとも書いている。医療は一般のサービス業とは違うので「お客様」的な考えはやめてほしいという主張は理解できる。ただ、それなら旧態的に「先生」と呼ばせるのもいかがなものか。患者にとって医師は教えを請う「先生」ではないし、士業でもない。

処世術的な意味合いで「先生」と言っておけば得と書いたのだろうが、少し気になったのでおまけで言及した。

本自体は、患者にとって役立つ情報が他にも多く載っているので、ぜひ次に病気やケガにかかる前に読んでおいてほしい良書だ。