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THE INYOSHOTEN PLUS

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ニコラ・テスラの世界『Dimension W』から未来の生き方を考える

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かつてトーマス・エジソンと並び天才と謳われた発明家がいた

無線による送電で世界の全てを動かそうとした人物 ニコラ・テスラ

早過ぎた天才の夢は

生前も そして死後も実現することは無いと言われ続けていたが

没後100年の画期的な発明によって

さらに飛躍し現実のものとなる

X・Y・Zに続く第4の次元軸『W』から無限にエネルギーを取り出せる『世界システム』の導入で、発電や送電がいらなくなった2072年を描いたサイエンス・フィクション。アニメ化もされ、10巻まで漫画が刊行されている『Dimension W』のことだ。

この引用と説明だけでワクワクしてこないだろうか?

《目次》

 

『ニューテスラエナジー』とイーロン・マスク

ニューテスラはいつもそうだ。コイルが原因の深刻な事故をいつも隠す。私もこの顔と手足と、そして大事な妻を失った。

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ルパンのように盗むお宝を予告するのだが、毎度失敗する覆面の怪盗『ルーザー』の台詞。劇場型で盗みに失敗するように見せて、真の目的である手に入れたいコイル(Dimension Wからエネルギーを取り出す装置)をきっちり手に入れる彼のこのシーンは、大きい物語のプロットをなぞる重要なシーンだ。

コイルを管理しているのは『ニューテスラエナジー』という会社だ。同じニコラ・テスラになぞらえた現実世界の会社に『テスラモーターズ』がある。

inyoshoten.hatenablog.com

創業者はイーロン・マスクで、彼は太陽光から電気を取り出す会社『ソーラーシティ』、電気を自動車で活用する会社『テスラモーターズ』、火星への移住をゴールに宇宙開発をする会社『スペースX』の3つを持っている。このように会社を並べてみると、最終的には「火星で電気エネルギーを全ての原動力として動かす世界」が彼の頭の中にくっきりとイメージされていることがわかる。『Dimension W』に出てくるニューテスラは、マスクの夢を全て集めたような企業に見えてきて面白い。

読み進めると、宇宙開発を目的とした秘密施設の話も出てくる。マスクもロケットの次は、巨大転送装置を開発して物質や生命の転送まで手がけていくのだろうか?

何十年か前はサイエンス・フィクションは相当先の未来の話だったけれど、現実に存在する企業の延長上か?と考えられる時代に今はなってきている。

 

WE=pmc^2

WE=pmc^2

p=可能性

m=質量

WE=次元Wエネルギー

作中で、アインシュタインの『E=mc^2』を発展させた方程式をニューテスラ創業者の百合崎士堂博士は見出している。

この方程式の中で「質量」を「エネルギー」に、「エネルギー」を「質量」に変換することには成功している。つまり物質の転送が可能になっている。しかし、「可能性」を「エネルギー」に、「エネルギー」を「可能性」に変換することには成功していない。だから知性を持つ「可能性」、奥行きをもつ生命体は転送ができない、という設定だ。

この課題をクリアしたとされるコイル『ジェネシス』が本作品の1つのエピソードの佳境に関わってくる。

かなりロジックが錬られていて面白い。ニコラ・テスラしかり、アインシュタインしかり、こういった現実の科学者の理論をもとにフィクションの世界を構築していく本格作品は珍しい。筑波大学の研究者でありアーティスト落合陽一も「『攻殻機動隊』以来、ここまで作りこまれたSF作品は見なかった」と語っている。

news.mynavi.jp

 

どの時代で時を止めるのか?

前出の落合さんがふれていることでもあり恐縮なのだが、『Dimension W』の1つの魅力は主人公が時代に取り残されたオッサンだというところ。

オッサンかどうかはともかく、2072年の世界からすると100年近く前のレトロな車(ポルシェだったりトヨタの実在する車)を乗り回す、旧時代で時が止まっている一人の男。新しく登場したテクノロジーを信用せず、機械の身体やコイルを人類がみな身につける時代で、生身の身体で生きている希有な存在。

これはフィクションの世界だけでなく、現実でもアーミッシュとか旧時代の文明で生きることをよしとしている人たちは一定数存在する。アーミッシュは「アメリカ大陸の開拓時代」で時を止めている。

ある時代で時を止めている人のなかには、「病院は使っていいけれども電気は使ってはいけない」というようなルールが個人やコミュニティごとにあるそうだ。ここまで極端でなくとも、例えばスマホが普及している中で未だにガラケーを使っている人、ハイブリッド車や電気自動車が町に溢れる中で燃費の悪いSUVに乗っている人もプチ「時が止まっている人」と言えるのかもしれない。

IoTなデバイスの種類が増え、AIで人間が今行っている作業の多くが機械に移行する世界がこれから僕たちを待っている。「どの時代で時を止めるのか?」は個々が幸せに生きるうえで重要なテーマになってくるかもしれない。